INTERVIEW

中国マーケットの現在と、日本のプロダクトがシェアを獲得するために今やるべきこと

以前より大きな市場として注目を浴びる中国マーケット。インバウンド需要でも日本のプロダクトの一番の価値は「Made in Japan」とされてきました。ですが、ここ最近ではどうやらその価値観も変わっているとのこと。中国市場の変遷と、今求められているビジネスニーズについて、TIERRAS Groupより吉田 直史 氏を迎えて、話を伺いました。

Speaker Profile

吉田 直史

(株)TIERRAS CEO
大手総合印刷会社にて企画営業に従事した後、株式会社アイスタイルではソリューション事業部長として、東証マザーズ上場に貢献、18年から執行役員VPを歴任。
アイスタイルチャイナ(上海・香港)では、2012年~8年上海に常駐し、創業者兼CEOとして、越境&一般貿易EC事業/チャネルセールス事業/メディア事業等を立上げ、年間売上を50億円まで伸ばし、グループのグローバル事業躍進を牽引した。
2020年3月より、株式会社TIERRASを香港/上海/東京に立上げ、‘日中消費財ブランドの国際インキュベーション事業’を推進中。
北京大学経済学院外資企業EMBA修了。
売れ筋の商品構成が変わるという状況の中で外国資本の我々がどう戦っていくか?
中国市場の現状やここ数ヶ月の変遷はどのようなものなのでしょうか。
中国市場の今と課題については、二つ大きな転換点があると思っています。
1つ目も2つ目もコロナの影響ではありますが、やはり1つ目は中国の引きこもり化が、BeforeコロナとAfterコロナでは違う点かと思います。

コロナ流行以前は、中国のGDP どんどん上がり、中国の方の所得も上がってきているので出張や旅行で、海外に出て行っていました。日本で言っても、インバウンドによりたくさんの観光客が来ていましたが、コロナの流行を期に外需が一気に冷え込んで抑制され、内需が強化される、という所に向かっていると思います。

1つは(前述の通り)海外渡航へのためらいですね。自粛というのも、自分自身は海外に行きたいんだけれども、行くことができないという側面と、コロナ発生国であること、そして昨今の香港での国家安全法などもあり、世界から孤立している、また敵視されているという点で、海外旅行や出張に行くことが“怖い”といった危機感が関係しているのかなと感じます。

加えて挙げられるのは、輸入大国から輸出大国へ、という動きです。AliExpressという、Alibabaの輸出入貿易部門の出荷額が、2018年には1,000億円を超えていました。中国が自国に引きこもりをしていく一方、中国産の商品が外に出て行くことに関してはこれからも加速していくのだと思います。内需を強化しながら、外需についても受け入れられるものに関しては外に出していく、という動きが今後も進んでいくんだろうなと思っています。

もう1つの背景としては、コロナをきっかけにデジタルシフトが益々進んでいるということです。やはり消費者ニーズも変わってきており、売れ筋の商品構成が変わるという状況の中で外国資本の我々がどう戦っていくか?という点において、偶発的なヒットが生まれにくくなっていると思っています。
19年1月に施行された EC 法によって、ソーシャルバイヤーが抑制されているという背景もあり、いかに現地のニーズから逆算して、商品を作っていくか?マーケティングしていくか?という視点が必要になっているかと感じます。この辺りが大きな変化のポイントかなと。
Made in Japanが終わりを迎えるというよりは、その次のステージが来た、というのが正しいのでしょう。
中国市場において、日本に求められているビジネス上のニーズはなんでしょうか?
noteに記載していたような、Made in Japanが終わりを迎えるというのは過剰な表現だったかなと思いますが(笑)、中国にいる様々な消費財を扱う企業の方は、理解されているでしょうが、大前提として中国産の国産ブランドがかなり強くなってきているんですよね。そのため、Made in Japanの我々が弱くなっているとよりも、中国産の商品が強くなっているということだと考えています。
そういった状況に危機を覚えて、欧米ブランドや韓国ブランド、オーストラリアブランドなどの海外ブランドも、かなり力を入れて(商品開発やマーケティングに)取り組んでいます。そういった状況下で、Made in Japanのシェアが下がっている、すなわち、今まで取れていたものが取れなくなってきているという事実は、ダイレクトに肌で感じられるところだと思います。
理由としては、今まで中国というと「安かろう悪かろう」というイメージがだったと思いますが、ここ最近では中価格帯、もしくは高価格帯の商品でヒット商品が出てきたりしています。一級都市にいる上海や北京、深センですと、外国産ブランドが好きという方もいらっしゃいますが、デザインも然り、使い心地・使用感というところも、海外ブランドと比較しても大きな差が生まれにくくなっています。それは、現地の工場の生産管理の技術発達も理由として挙げられますが、我々もビジネスのやり方を変えていかなければならないと感じています。ですので、Made in Japanが終わりを迎えるというよりは、その次のステージが来た、というのが正しいのでしょう。

Tmallの2019年のコスメティクスの売上トップ1は中国産のブランドです。Perfect Diaryという、まだ設立から3年半から4年ほどしか経っていないブランドなんですが、年間でロレアル、エスティーローダー、LVMHを抜いて1位になっています。
年間売上に関しても、 Tmallだけで300億円近い売上を叩き出していたり、売上トップ20のうちの8ブランドが中国産ブランドだったりと、そういった国産ブランドに我々Made in Japanのブランドがどう立ち向かっていくのかが引き続きの課題かと思います。
“D2CN” = Direct to Chinese Consumer という概念
今後ご自身のビジネスで達成したいことや、懸ける想いを教えてください。
前職は16年間、アイスタイルで中国の代表を8年やっていたんですが、その時から中国産ブランドがどんどん強くなり、外国産ブランドのシェア獲得が益々難しくなっているという状況に直面していました。そういった状況を踏まえ、私自身が独立、船出していきたいというビジョンに関してですが、日本や世界では“D2C”という言葉が流行していますが、これからのトレンドは“D2CN” = Direct to Chinese Consumer という概念が、特にアジアでビジネスを展開している我々にとっては非常に顕著になってくると考えています。

このChineseコンシューマーというのは、中国の消費者だけではなく、台湾や香港そしてASEANに住んでいる華僑の方も含まれますが、そういった方々の肌質や髪質、そして消費習慣は、住んでいるエリアによって多少変わるものの、マクロトレンドは変わらないのではないか、と思っています。15億人、16億人以上いるチャイニーズコンシューマーに向けて、我々日本のブランドをどういう風に向けていくか、という観点でD2CNにおける最大のブランドインキュベーター集団になっていきたいというビジョンを掲げています。

そのビジョンに対してなぜこれから絶好のチャンスが到来するのか、という点については、コロナは偶然的に重なってしまった出来事ではあるものの、国境間が封鎖してしまい、ビジネスそのものや、人の往来というのがしづらくなっているという現状があります。そこで、現地の消費者を良く知る人材が、中国及び中華圏において、ヒットから逆算した商品づくりや、現地での販売支援を推進することで、まずは成功事例を作っていきたいと思っています。私自身も Tmall Globalのブランドインキュベーションキャンプへ、初の日本人評議員というポジションになり、そういった資源も活用しながら、日本発の成功事例や中国・中華圏で育成され、他アジア世界に飛び立っていく、そんな事例を数多く手がけていきたいと思っています。

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Writer's Comments

近いようで、全く異なる性質を持つ中国市場。インバウンドではMade in Japanであることに絶対的な価値がある、ということを信じていた我々も、変化の速度が日本の何倍でもある中国市場が、今なにを求めていて、その中で日本のプロダクトはどう戦っていけるのか?を柔軟かつより早いスピードで考えていかなければならないことを実感する、そんなインタビューでした。
進化著しい中国市場でのマーケットデザインに挑む吉田さん、これからの活躍を期待しております!

Interviewer Profile

わたえり/渡部 瑛理果(Erika Watanabe)

Pivot Tokyo 2020 ゼネラルマネージャー
1992年生まれ、千葉県出身。通称 わたえり。上智大学経済学部を卒業後、2015年に博報堂入社。営業職として外資クライアントを中心に担当したのち、TBWA\HAKUHODOへ出向。コミュニケーション領域のプロジェクトマネジメントに従事。2020年7月より、Pivot Tokyo株式会社に所属。現在は、Pivot Tokyo 2020のメディア運営・コンテンツ制作をはじめ、グローバルコミュニティの日本誘致、企画運営を担う。

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