2022年は、日本国内でも「NFT」や「Web3」という言葉を様々な場面で耳にすることが多くなりました。NFTは元々米国を中心に成長してきたことから、プラットフォームも海外企業のものが主流です。そんな中、クリエイターにフォーカスした新たなNFTプラットフォームを提供する日本企業があります。
1949年創業、印刷事業を行う「広済堂」。同社は、デジタル技術の将来性にいち早く着目し、1970年日本で初となるコンピューター文字組版システムを導入した企業です。今年グループ会社である「広済堂ネクスト」からNFTプラットフォーム「TATSUMAKI」をローンチしました。今回のインタビューでは、本プロジェクトの責任者を務める若柳鉄平氏にお話を伺いました。

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Speaker Profile
若柳鉄平 氏
アートビジネス本部 本部⻑
株式会社 広済堂ネクスト
- ⼤学卒業後、1997年株式会社電通に⼊社。メディアとのアライアンス業務に従事し、番組やイベント等を数々⽴案。⼤⼿通信キャリアや流通、様々なメーカーなどのアカウントを担当し、CM制作、⼤規模キャンペーンやオリンピック等⼤型イベント作業にも従事。2007年に、現「radiko」の先駆けとなるインターネットラジオプラットフォームサービスを開発/公開。2021年より株式会社広済堂ホールディングスにて、シニアコミュニケーションプラットフォーム開発をサポート。2022年4⽉より現職アートビジネス本部 本部⻑、TATSUMAKI project責任者を務める。
70年の歴史を持つ印刷事業を活かしたNFT作品を展開
- Q:国内外においてNFTプラットフォームが次々と出てくる中で、貴社サービスの特徴とは
- A:「TATSUMAKI」の特徴は、広済堂が70年以上培ってきた印刷技術を用いた、実際に手に取ることができる「フィジカルアイテム」とセットで販売している点にあります。当社で厳選したものを出品し、印刷事業を通して関係を深めた出版社やアニメ制作会社他、多くのクリエイターの方々と一緒にNFT作品を企画しています。印刷事業を主な事業とする企業だからこそ、NFTというデジタル上のものを立体物やTシャツなど「フィジカル」なものに印刷して楽しむことができます。今後も数多くの作品を紹介していく予定です。
クリエイターがNFT販売するまでの手厚いサポート
- Q:NFTの知名度は上がってきているものの、まだまだ実際にNFTの作成や販売をしている人は多くありません。クリエイターやユーザーはどのように増やしていくのでしょうか。
- A:アート販売で実績のあるクリエイターの方々と接する機会が増え、見えてきたことがあります。それは、NFTアートもクリエイターにとっては新しい市場やカルチャーであり、ビジネスとして成り立たせるまでには様々なサポートが必要だということです。NFTに新たに参入されるクリエイターには、ただ販売する場所を変えただけでは効果はないと正直にお伝えし、より作品の価値を広めるためのサポート体制も併せてご紹介しています。リアルのアート販売では個展を開き、大勢の方に見ていただくことで認知を高めますが、この「認知拡大」が必須である点はNFTにおいても同様です。リアルの画廊では多くてもその購入者は100名ほどだと思いますが、NFTの世界ではそれが「万」もしくはそれ以上の規模になる可能性があります。拡散性が非常に高いプラットフォームですので、そのなかで作品を購入してもらうために認知を高めていくことはとても重要です。
当社では、NFT作品を一つのプロジェクトと捉え、ロードマップ作成やマーケティング支援をしています。
具体的には、NFT化だけでなく、TwitterやDiscordを使ったコミュニティ形成サポートや、AI技術のご紹介、クリエイター同士のコラボレーション作品の企画など、クリエイターの方々がNFTで新しい作品を生み出し、購入者との新しい関係を築けるような環境作りをしています。
ユーザー獲得に関しては、現在J-WAVEとプロジェクトを行なっております(2022年10月現在)。新人ミュージシャンの活動をNFTを軸に発信し、ファンを獲得していくプロジェクトです。既存のNFTホルダーではなく、情報感度の高いラジオリスナーに向けた情報発信でユーザー数がどこまで増えるか、挑戦だと考えております。
フィジカルと掛け合わせたNFT
- Q:今後、印刷技術を活かしたNFTと掛け合わせた商品やサービスも検討されていますか?
- A:現状「TATSUMAKI」では、購入されたNFTのみフィジカルアイテム化が可能ですが、今後は他のマーケットプレイスで購入したNFT(作成したクリエイターの許認可があり、且つTATSUMAKI側データサーバーに移行されたもの)を、NFTホルダーが自由にフィジカルアイテム化できるようにしたいと考えています。
またNFTによっては、その作品を用いたビジネスをすでに許諾しているクリエイターも多数いらっしゃいますので、NFTホルダーがフィジカルアイテム化した商品の販売や、第三者企業による広告利用などNFTを用いた様々なビジネスのサポートもする予定です。
さらにクリエイターや購入者が使いやすいサービスへ
- Q:今後の展望を教えてください。
- A:「TATSUMAKI」は、「初めまして、NFT」を合言葉に、クリエイターやNFT購入希望者にとって使いやすいサービスを提供しています。まずは“売りやすく、買いやすい”基本機能の拡充を進めており、ERCベースの二次流通機能を追加機能として準備中です。世界一のマーケットプレイス「Open Sea」は、贋作も多く存在する玉石混交な市場であり、規模は大きくとも、新規ユーザーにとっては参入障壁が多いです。我々がベンチマーク企業にしている「Magic Eden」はサービス改善プランを逐次Discordで募集し、その対価としてトークンを発行するなど、運営の重要な役割をユーザーが担っています。「TATSUMAKI」でもユーザーに対して独自の会員証のようなNFTを発行予定で、出品者/購入者問わず、ユーザーの皆様が「TATSUMAKI」に参画できるようなエコシステムを目標としています。
また、現在保有されているNFTの半数はNFTゲーム関連(将来のゲーム化をロードマップに入れているNFTも含む)とも言われています。そんな中、「TATSUMAKI」でも「P2E」型ゲームのNFTコンテンツ販売なども検討を進めています。その他にも、NFTチケット販売やDAO組織がNFTで資金調達する際の「INO」(initial NFT offering)の受け皿としてのマーケットプレイスの活用などあらゆるコンテンツやサービスに対応していく予定です。
TATSUMAKIについて
「はじめまして!Web3」をコンセプトとしたNFTマーケットプレイス「TATSUMAKI」は、初心者には敷居が高いと感じられるNFTをフィジカルアイテム化やクレジットカード購入など分かりやすい形で提供しています。
Writer's Comments
さまざまな人気著者、出版社から、その印刷クオリティの高さに指名で依頼が続く同社。プリントメディアだけに止まらず、今回のようなweb3ビジネスの展開にもいち早く進出し多角的なソリューションにこだわり進む姿はweb3、印刷業界を次のステージへと進めていくだろうと感じた。
Interviewer Profile

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高畠奈沙
Pivot Tokyo 編集部 / NFTサミット東京運営事務局 -
国内外からスピーカーを招聘し、国内のWeb3推進を目的とする日本発グローバルコミュニティ「NFTサミット東京」。主催・運営企業であるPivot Tokyoが運営するメディア。業界ニュースや企業インタビューをお届け。第3回NFTサミット東京は12月13、14日、浜松町で開催決定。( 公式HP:https://www.nft.pivot-tokyo.com/)