INTERVIEW

原点は「自然の凄さ」発酵食品と健康を考えた商品を開発する大学発ベンチャー、アグクル

2018年に大学発ベンチャーとしてスタートした同社。同社が「フードコスメ」と題する発酵食品に着目し、様々な販路で商品展開をしている。昨今、話題となっているサステイナビリティにも通ずる観点を持つ同社のビジョン。これまでの軌跡と今後の展開を、代表の小泉氏に現役大学生の経営者を目指す山崎がインタビュー。

スピーカープロフィール

小泉泰英

株式会社アグクル 代表取締役
1997年生まれの24歳。農学部に入学したことをきっかけに農家に住み込みでアスパラの栽培をしていたが、プライドの高さで挫折。どんな生き方をしたいのかに悩んでいたときに内村鑑三の本と出会い、「先人の智慧を受け継ぎ、次世代に感謝される生き方をしたい」と思う。その後スタートアップのインターンを経て、宇都宮大学農学部在学中の2018年に株式会社アグクルを創業。「社会を発酵させる」をミッションに、太古より世の中を支えてきた微生物と共に循環する社会を目指す。好きな言葉は“自分の幸せの先に誰かの幸せがある”という意味の「自己中心的利他」。一児の父。個人としては「子育てと事業を両立するZ世代起業家」を目指す。
ではまず初めに、自己紹介と会社紹介をお願いします。
弊社は、2018年5月に大学発ベンチャー企業としてスタート。大学時代に研究していた発酵食品の微生物の凄さに気づき、創業に至りました。全ての事業を通して、「食べるもの、体に触れるもの、体に取り組む全てのものが健康と環境にいいものに置き換えていく社会を作ろう」というのが私たちのミッションです。
事業としては、「フードコスメORYZAE(オリゼ)」という、毎日の発酵食品で健康と美しさを手に入れようというD2C事業のほか、道の駅や生協組合のカタログに掲載での通信販売や、託児施設の給食に発酵食品を提供するBtoB事業を展開しています。これまでは、既存の通信販売や直販をおこなってきましたが、コロナ禍でトレンド化したD2Cの流れもあり、ECの活用や新しい世界観を取り入れるため、2020年11月に「フードコスメORYZAE」をリリースしました。
現在は、米麹を中心に健康と環境両方に配慮した商品を作ろうと考えています。将来的にはペットフードや化粧品、入浴剤など、人々の生活に関わる全てのものが発酵されたもので囲まれることで、健康にも環境にも良い世界を作っていきたいと考えています。
改めて、微生物の素晴らしさとはなんでしょうか。
この世では、微生物以外の生き物は消費活動をしています。動物や人間は、「取り過ぎたら良くない・種を植えたら次の果実を得ることができる」という知見を得て循環を生んでいます。一方で、微生物や植物は、他の生物が出したゴミや産物を地球に返しており、それが彼らの生きがいになっているのです。「無意識に生活することで地球を再生している」ということが、実に素晴らしいと感心しました。最近、SDGsやESGが流行っていますが、植物などの自然の原理原則を理解して活用しないことには、本当の意味でのサステイナブルな世界を作ることができないと考えています。
発酵食品を取り入れる消費者側のメリットとしては、元々でかい物体を発酵させることによって引きちぎって細かくし、消化を良くしたり、別の栄養素を生むということです。「腸活」という言葉も流行っていますが、色々な種類の栄養素を腸に与えることで腸の活性化を促進するという働きがあります。
コストが高くなっても良いものを作る際、消費者にどのように良さを伝えるかというのはとても難しいと思います。何か工夫されていることはありますでしょうか。
まさにその点が一番難しかった点だと感じています。創業から3、4年、その点でとても苦しみました。無農薬であることや、自分達がどれだけ頑張ったかという点は、消費者からすると何もベネフィットがないと感じています。消費者が求めているのは、「無農薬であること」ではなく、「無農薬の商品を食べることで健康になりたい」ということです。そのため、私たちは商品開発において妥協せずに真摯に取り組んでいますが、消費者にはその商品から得ることができるベネフィットを提示するようにしてきました。
最後に、今後の展望を聞かせてください。
3年という短い期間で私たちのブランドが、世の中で大きな流行りに乗るということは極めて低いと考えています。ここ10〜15年人気が出てきたと思う企業は、今まで試行錯誤を重ねて今多くの人に使われるサービスになってきていると感じます。そのため、M&AやIPOのためにD2C事業をやっているという意識は全くなく、世界観とファン作りに正面から向き合うことで50〜100年間お客様から愛されるような企業を作ろうと思い、お客様と直接繋がることのできるD2Cという事業スタイルを選びました。今はブランド作り、ファン作りという点に力を入れていきたいという気持ちが強くあります。

あとがき

インターネットの発達でダイレクトに消費者に価値提供をすることが容易になった今の時代、D2Cというビジネスモデルは社会に対する個人の意思表明の場となっているように感じます。自身の素晴らしいと感じたこと、重要だと思うことを持続可能な活動として社会に発信する手段として大いなる可能性を秘めています。大学時代に惚れ込んだ「発酵の持つ力」を、小泉さんがこれから先どのような手段で社会に影響を与えていくのか目が離せません。

インタビュアープロフィール

山崎主真

APU
都立日野で高校野球東京選抜に選ばれる
野球推薦で大学進学も、心機一転退学。一からやり直して大学受験。今年APUに合格
東京都代表としてキューバ遠征に参加した際に、日本とキューバの経済格差を感じました。将来、教育を広めることによって経済格差を解消するという目標のもと、今を全力で生きている大学生です。

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