INTERVIEW

すがけんさんに聞く「D2Cで本来議論されるべきこと」

エンジェル投資家としても40近い事業に投資を行い、D2C業界についても知見の深い、すがけんさんこと菅原健一さん。数々のEC関連、D2C関連のセミナー登壇も行うすがけんさんに、「D2Cで本来議論されるべきこと」とはなんなのか?を聞いてみた。

スピーカープロフィール

菅原健一

CEO, Moonshot社
エンジニアからキャリアをスタートし、20代で大手ブランドと協業で携帯コンテンツの開発・プロデュースを行う。30代ではアドテクノロジー会社のscaleout社の取締役CMOを務め、KDDI子会社のmedibaとのM&Aを成功させる。その後はスマートニュース社でBtoBマーケティング責任者を務め、広告業界で大手広告主の広告を担当する。マーケターとしての活動としては経営学者であるフィリップ・コトラー氏のコトラーアワードの審査員を務めるなど精力的にマーケティングの普及を行ない、Moonshot社では日本のみならず海外の企業もクライアントに持ち、「問題解決」で企業を成長へと導いています。
<そもそもD2Cって?>
ビジネス界だけでなく、広く一般にも知られるようになってきた言葉、「D2C」。
すがけんさんへのインタビューに入る前に、その定義をおさらいしておく。

D2Cとは、メーカーが中間流通を介さず自社のECサイトなどを通じ、商品を直接消費者に販売するビジネスのこと。

上記の定義を基にすると「メーカーによる自社サイトでの直販」も含まれますが、“D2C”という言葉が用いられる場合、2000年代後半辺りから米国のスタートアップ企業を中心に発展したビジネスモデルを指すことが多くなっています。このビジネスモデルとは、オンラインなどを通じて商品や創業の想いに関する世界観などを消費者に直接訴えることで自社のファン作りを行う一方、流通マージンなどを抑制しコスト競争力も高めるなどといった「売上面」と「コスト面」の双方で競争優位を図るものです。
参照

D2Cという言葉が指すところのポイントとしては「顧客と直接繋がっている」「ブランドの世界観を直接訴える」ことの2点だろうか。

この点を踏まえて、バズワードにもなりつつある「D2C」を考える上で、本来議論されるべきことは何か、そして顧客と直接繋がることが今後他の業界にもどのような影響を与えるのかを考えてみたい。
このところのD2Cの大きな流れとしては、どのような特徴があるのでしょうか?
すがけんさん:元々は、ブランドや商品にストーリー性や強いコンセプトを持った新興系のスモールブランドがこのD2Cという言葉を押し上げてきたかもしれませんが、現在は米国をはじめとして、大企業のD2C化が加速していると思います。

今までは、商品を売るにも「購入場所」としての小売を介して消費者に届けていたし、ブランドとしてのコミュニケーションも広告代理店やCMなどのメディアを介して届けていました。

ですが、ソーシャルメディアが当たり前に使われるようになったり、Shopifyの登場によって、生活者と直接繋がれる手段が増えてきた今、「お買い物体験」が進化してきていると思います。

顧客と直接つながれるからこそ、顧客側は商品の検討を自発的に行うし、よりわくわくするお買い物体験・ブランド体験を求めるようになる。この流れを、多くのブランドが無視できるわけはないですよね。また、お買い物体験の進化もさることながら、顧客データの管理や利益率の改善という観点でも米国の最先端企業ほど、先行してこの流れを作り出しています。
そもそも、米国の最先端ブランドほどD2C化が加速しているのでしょうか?
すがけんさん:ひとつは、GDPRやCCPAに代表される、データ管理の観点が大きいでしょうね。これまで、サードパーティデータを活用できた時代にはあまり自社でデータを保有しようという意識が強くなかったのでしょうが、今後、中間の存在である「代理店」「小売」「流通プラットフォーム」を介してビジネスを続けていると、データは中間にとどまってしまい、自社で確保することが出来なくなってしまいます。自社でデータを保有・管理できなくなるという危機感が、このD2C化の流れを大きく突動かしています。

また、直接顧客と繋がることは、ブランドと顧客のコミュニケーションを生み出します。このことが、ブランドロイヤリティの向上や、自社ブランドのファンをつくり、増やし、深い関係性になっていくからこそ、同じスニーカーを買うなら自分が最も愛着のあるブランドを第一優先に選ぶ、そんなお買い物体験のスタート地点を作ることができます。

実際、メジャーブランドのD2C化の先駆者ともいえるNikeでは、この10年で直販率は2倍以上になっており、かつ2019年から2021年までの収益額はほぼ3倍を記録しています。直販・オンライン化することで、これまで発生していた中間マージンがなくなり、利益率は向上するし、その分を自社のブランドのファンに直接還元していくことができる。良い循環に変わっていくんですよね。
今後、この「Direct-to-Consumers」の流れは、他の業界にも影響を与えるのでしょうか?
すがけんさん:間違いなく影響を与えます。日本でももうすでに多くのメジャーブランドが自社ECの強化を推進していたり、ブランドのファンと直接繋がるソーシャルメディアの活用を始めています。ますます、中間の存在が不要になる、ということです。

特に、広告が効きづらくなっているこの時代、広告主であるブランド企業が顧客と直接繋がる流れになれば、広告代理店の存在もいらなくなってしまう。顧客がブランドと直接つながっている以上、ブランドから直接発信される声をまずは信頼するでしょうし、そのことを前提にコミュニケーションを取っていかなければならないでしょうね。

なにより、「D2C」のポイントは、消費者と直接つながることで消費者とブランドがやりとりできるようになります。サービス的にはやりとりが増えることでお客さんの体験を良くすることができるし、ビジネス的には接点増、来店増、購買点数増、購買単価増、割引なしによる利益増が見込めます。この体験こそがブランドの世界観を伝えるタッチポイントであり、ブランド体験そのものであることを、より意識するようになってほしいですね。
D2C Summit Tokyo 2021
開催概要
日程:2021年10月5日-6日
会場:渋谷 TRUNK (HOTEL)
予定参加者:100-150名
参加者:通販・D2C事業主、パートナー企業
公式サイト:https://d2csummit.vueloo.us/

あとがき

「直接繋がる」ことが、今後ブランドを育て、進化させる重要なキーであることは間違いないことが分かった、すがけんさんへのインタビュー。顧客と繋がることは当たり前であることとして、どのようにコミュニティを形成するか、ブランドロイヤリティを向上するか。長く続くブランドであるために、どうあるべきか?を議論すべきフェーズが今であり、それがビジネス上も企業の成長にどう繋がるかを見据えなければいけない段階に来ていますね。

インタビュアープロフィール

わたえり/渡部 瑛理果(Erika Watanabe)

Pivot Tokyo
1992年生まれ、千葉県出身。通称 わたえり。上智大学経済学部を卒業後、2015年に博報堂入社。営業職として外資クライアントを中心に担当したのち、TBWA\HAKUHODOへ出向。コミュニケーション領域のプロジェクトマネジメントに従事。2020年7月より、Pivot Tokyo株式会社に所属。現在は、Ascendant Japan事務局長としてコンテンツクリエイション、運営に携わる。

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