INTERVIEW

COVID-19が教育に与えた影響と学びとは: コレージュ ドゥ レマンの事例

新型コロナウイルスの感染拡大は、多くの業界に影響を与えました。教育も例外ではなく、多くの学校や教育者にとって非常に厳しい年となりました。しかし、コロナによって新たな教育の機会も生まれました。教育界はどのように変化したのか。コレージュ ドゥ レマンのジャスティン・アッシャー氏にお話を伺いました。

スピーカープロフィール

ジャスティン・アッシャー

ボーディング・ディレクター | コレージュ ドゥ レマン
まず、スクールについて教えてください。
ジャスティン氏 : 「コレージュ ドゥ レマンは、60年前に設立されました。私たちの学校はジュネーブのすぐ近く、スイスの自然に囲まれた山の中にあります。本校には2歳から18歳までの生徒がおり、8歳から18歳まではボーディング(全寮制)となっています。学校としては、教育理念や学校でのリーダーシップなど、先見性のある学校として知られています。設立当初からさまざまなプロジェクトに参加しておる、世界に70校あるNord Anglia Educationファミリーの一員でもあります。本校は、非常に国際的で、100カ国以上の国籍を持つ生徒がいます。子どもたちにとっては、教室でも教室外でも、お互いに異文化について学ぶことができる、非常に多様性に富んだ素晴らしい環境です。

この学校が非常にユニークなのは、学問と個人の生活におけるバランスに重点を置いているからだと思います。授業で行われるアカデミック教育のみならず、課外活動、心身の成長を促す教育にも力を入れています。子供たちには、学業が重要なのはもちろんのこと、人生における価値観、尊敬の意(Respect)、国際性(Internationalism)、チームスピリット(Team Spirit)、卓越した価値観(Excellence in Value)を知ることも同様に重要であると教えています。これはRISEといわれ、本校のモットーとして掲げられています。当校の特徴のもう一つには、寄宿舎の先生は寄宿舎部門に特化しており、教科は担当していません。役割を分担することでその分野の教育に注力することができます。寄宿舎の教師は、21世紀に大切なこと、例えば栄養バランスのとれた食事、乱れない心をもつことなどを意味します。さらには、自分にとって正しい友人の選び方、インターネットの安全な使い方、スクリーン依存症との付き合い方などを教えます。私たちは、生徒のご家族に定期的にレポートをお送りしますが、その際は学業成績だけではなく、生活の状況もお伝えしています。」
コレージュ ドゥ レマンでは、子どもたちはどのような生活を送っているのですか?
ジャスティン氏 : 「(寄宿舎の)子どもたちは7時に起床し、全員で一緒に朝食をとります。朝食時にはスマートフォーンやタブレットなどのテクノロジー機器の使用を禁止しています。これは、子どもたちがお互いに話し合うことを目的としているからです。その後、授業が始まります。午前10時から午後4時まで、通学している生徒と混ざって授業を受けます。本校では、AP、IB、DP、IBCPを含む多くのプログラムの中からカリキュラムを選ぶことができます。午後4時を過ぎると、子どもたちは寄宿舎に戻ります。寮のマスターと会って、アクティビティの前に日々の報告を兼ねた会話を交わします。アクティビティは午後4時15分から5時15分まで。20分の休憩の後、またアクティビティがあります。子ども達は、毎週100以上のアクティビティから自分のやりたいものを選択することができます。例えば、ディベートなどの室内で行うものから乗馬やヨットなどのスポーツまで様々なアクティビティが用意されています。その後は夕食の時間です。夕食は、午後6時30分から7時50分までで、国際色に富んだディナーが提供されています。2月には中華料理でチャイニーズ・ニューイヤーを祝い、3月にはイラン料理でイランのお正月を祝いました。夕食後の時間は、1時間の自由時間があります。キャンパス内のアクティビティに限定されますが、フィットネスルームに行ったり、クラブに参加するなどといったことができます。午後8時45分までに寝室に戻り、さらに1時間勉強します。睡眠時間は年齢によって異なり、低学年は午後8時30分頃、高学年は午後10時から11時頃に就寝します。週末には、できるだけ多くの課外活動を行うようにしていますが、これは始めに述べた学問と心身の健康とのバランスをとるためです。バレーボール部、マウンテンバイク部、ラグビー部、サッカー部などのプログラムがあります。これらは土曜日の午前中に行われます。午後には、ジュネーヴに外出することが許可されています。生徒たちは、実社会を楽しみながら学ぶことができます。幼いうちは先生の監督のもと行動しますが、高学年になると単独行動が可能になります。日曜日には、スイス国内を体験する旅行に出かけることが多いです。」
COVID-19は教育に大きな影響を与えました。特に未就学児、低学年にとっては大変なことだと思います。どのような課題があり、どのように解決したのでしょうか?
ジャスティン氏 : 「COVID-19の期間中、生徒たちに可能な限り通常通りの環境を提供することに尽力してきました。本校には2,000人の学生がいますが、昨年の4月からずっとほぼ通常通り稼働しています。政府がロックダウンを命じたため、約1ヶ月間閉鎖していましたが、それ以降は通常通り運営しています。イギリスやスイスに学校で勤務する友人がたくさんいますが、多くは再開できずにいました。私たちの場合、なぜ学校再開がすぐにできたかというと、子ども達への教育に取り組んだからです。子供たちが感染拡大防止に自身で責任を持った行動をできるよう教育しました。キャンパス内にはメディカルルームがあり、スイスで有名なドクターがいます。本校は、スイス国内で最初に検査キットを導入した学校のひとつだったので、子供たちを定期的にテストすることができました。子供たちがどこかへ出かけるたびに、学校へ帰ってきてから検査をします。リスクの高い地域に行く場合は、学校として特別なヴィラを用意し、そこに10日間滞在して、先生と1対1で学習します。教室で先生や友達と一緒に過ごすのが一番ですが、感染拡大防止のためには必要な策でした。そういった取り組みもあり、子供たちは通常通り一緒に教室で授業を受けたり、マスクをせずに大きなテーブルで一緒に食事をしたり、課外活動を行うことができました。子どもたちの心の健康のために、学問のみならず課外活動を続けることはとても重要でした。

もちろん、通常通りできないこともありました。例えば、週末のジュネーブへの外出です。通常であれば、生徒は寮のマスターの許可を得てジュネーブに行くことができますが、この8ヶ月間は、マスターと保護者の許可がない限り、生徒は行くことができませんでした。とはいえ、多くの学校が完全封鎖されている中で、ほぼ通常通り稼働できていることは私としても誇らしいことです。」

■コレージュ ドゥ レマンについて

コレージュ・デュ・レマンは、スイス・ジュネーブにある学校で、2歳から18歳までのプレスクールから12年生までの生徒に、個々の成長、優れた学力、生涯学習を提供している。100以上の国籍を持つ約2,000人の生徒が在籍しており、European Council of International SchoolsとNew England Association of Schools and Collegesの両方から認定を受けている。ボーディングの様子がわかる動画はこちらから

あとがき

現在、スイスで唯一、通常どおり運営されている学校として、COVID-19対策にしっかりと取り組んでいます。重要なポイントは、大人が支持する受動的な予防対策を行ったのではなく、子どもたちに責任ある行動を教えたことだと思います。ここでは、子どもは子どもとしてではなく、社会の一員として扱われていると感じました。

インタビュアープロフィール

満木夏子

GKCors / Pivot Tokyo
Pivot Tokyo Executive Director / GKCors Director

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