INTERVIEW

~ローカルからグローバルへ~獺祭の挑戦:日本ブランドが世界に認められるまで

今や国内でも知らない人はほぼいない、日本酒ブランド「獺祭」。世界中で愛され、前安倍総理大臣が前米国大統領へ送ったほど国内外で認知されている日本酒です。もともとは山口では売れないお酒だった日本酒が世界で知られるようになったのはなぜか、また急成長する企業の課題について桜井社長に伺いました。

スピーカープロフィール

桜井一宏

旭酒造株式会社 代表取締役社長 
'76年、山口県生まれ。'03年に早稲田大学社会科学部を卒業し、他社を経て'06年に旭酒造へ入社。製造部門での修業を経て'10年から海外販売を担当。アメリカで飲食店や酒屋に飛び込み営業をかけるなど地道な活動を行い、獺祭の世界的評価を確立。その後、'16年に代表取締役社長に就任、以来現職


地元で売れないブランドから世界で愛されるブランドへ
獺祭が海外展開するに至ったきっかけを教えてください。
「私たちの酒蔵は、ローカルがとても弱かったので海外での伸びに繋がりました。山口県の岩国市発祥ですが、その中でも本当に負け犬。もう全然売れない状態だったんです。当時は、メインの普通酒を地元で販売していくというごく普通の日本の酒蔵のビジネスモデルでした。ところが、父の代だったんですけれども、業界全体、県内全体と比較しても非常に速いスピードで業績が落ちていきました。父が、もう山口ではやっていけないということで、広島、九州、東北などいろんな地域に営業をしましたが、あまりうまくいきませんでした。そんな中、東京だけは何件かの飲食店や酒屋さんが興味を持ってくれました。そこが突破口となり、軸足が少しずつ東京、首都圏の方に移っていきました。そうやって少しずつ拡大していくなかで、美味しいお酒の方が売りやすい、マーケットとして値段が高くても美味しいお酒の方が攻めやすい、ということに気づきました。地元の山口へは、東京から逆輸入みたいな形ではいっていきました。この別の場所へ行ってうまくいった、という成功体験が次のステップとして海外展開をした理由です。」

いざ海外、となった際には現地の人たちに良さを理解してもらえるかという懸念もあったそうです。

「実は私は、最初は海外反対派だったんです。海外に売るよりは、今のマーケットを中心に広げていったほうが良いのではと考えていました。というのも、海外の人が味を理解してくれるということが信じられませんでした。海外担当になり、売れるのかなと思いながらやっていたのですが、始めるとすぐこの考えは変わりました。お客さんの飲んでる姿を見ると、もう日本も海外も山口県も変わんないんですね。海外も、品質でいけるマーケットなんだ、ここには可能性があるんだとわかると、一気にマーケットの壁が無くなりやりやすくなりました。」
自分達の信じるブランドを売る
世界各国で展開されていますが、地域ごとのマーケティング戦略はどのように行っているのでしょうか。
「基本の考えでいくと、実はあまり国ごとに変えないようにしています。というのは、私達は山口県から東京へマーケットを広げていく過程で少しずつ成長し変化していったので、外に行くことに対して特別感を感じることがないのです。なので、中国であれば中国向けの獺祭を出そう、欧米にはワインみたいな日本酒を出したらいいんじゃないか、といったことをあまり考えないようにしています。よくお声がけはいただくんです。例えば、ワインのようなもの、欧米人は唾液の量がアジア人より多いので味にパンチがあるものが良い、中国向けには派手なパッケージが良い、発展途上国に向けてもっと安い酒を出した方が良いのでは、といった意見をあまり聞かないのです。私たちは、自分たちが信じるブランドを売りたいと思っていますし、それを海外との関わりの中で少しずつお互いにわかりあいたい、結果的に変わっていき強くなると思っています。ただし、良さを伝えるための努力は、全部同じアプローチではいけないと思っていますので、アジア向け、欧米向けのやり方は考えています。それこそ欧米では、ワインの歴史が長いので、味見から保存、物流までいろんな価値観がワインをもとにして作られています。そういう場所に日本酒を持ち込み、いい形で飲んでもらうことはやはり難しいです。価値観を少しずつわかってもらいながら商品を紹介しています。
成長する組織の課題
ー国内外で急成長するにあたり、成長にあわせたチーム編成はどのようにおこなっているのでしょうか。
「組織編成に関しては、課題にぶち当たったという感じもあります。成長して成功体験を積む、それを繰り返してきたというのは強みですが、ある意味成功体験が強すぎた部分があります。今度はそれをもう一度壊して違う方向に踏み出すということをやらなければと考えています。アメリカの酒蔵もそのような考えがあります。今までとは違う環境でおいしさを追求していく、その過程で外的要因のストレスがかかり、それが進化につながるのではと考えています。失敗もするでしょうが、それはフィードバックしてより強くなるための糧にできると思っています。海外チームも徐々に増えてきていますが、今でも海外営業と国内の営業はオフィスでは机を並べています。やはり考え方が違いますので、互いのチームに突っ込みあっています。例えば、『海外ではこういうのをやった』、と言えば、国内チームは『それは前にやったんだけど失敗したんよ』という具合です。でもこういうやり取りが変化のためになっていると思います。もうひとつは、私たちの場合海外のチームや東京の営業も含め全員が山口県の本社で製造部と同じ場所に拠点をおいています。常にちょこちょこと細かいコミュニケーションをトリながらじわじわ変化していく、それが私たちにとって大事なのではと思っているからです。」

インタビュー動画

あとがき

「自分たちの信じるブランドを売る」桜井社長、そして先代のブランドへの思い、挑戦し続ける姿勢に感動しました。日本にはお酒のみならずたくさんの素敵な文化や商品がありますが、なかなか突破口を見つけられていないブランドもあるのではないでしょうか。獺祭のローカルからグローバルへの進出と成功に続くローカルブランドがたくさん増えると良いなと思います。

インタビュアープロフィール

満木夏子

Pivot Tokyo
Pivot Tokyo 主催。世界最大級のテクノロジーカンファレンス、ウェブサミット日本事務局の代表を務める。日本からグローバルに挑戦する人を増やすため、GKCorsという英語の幼児教室も運営している。

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