INTERVIEW

NFT Summit Tokyo [pinnacle] インタビューシリーズ web3時代の物事を面白がる力の重要性

「web3で全てが変わる」このように言われても、いまひとつピンと来ない方もいるかもしれません。世界では、web3 でビジネス、働き方、全てが根本的に変わると言われています。会社や国という組織に依存する中央集権型から個人で自由に選択できる分散化時代。そんな時代に、企業や個人はどのような備えが必要なのでしょうか。

スピーカープロフィール

藤永端

テックジム株式会社 代表取締役
エスクルー社、イーグル社創業、国内初のアプリ開発スクール「RainbowApps」を企画運営ののち、2019年より「読み書きプログラミング」を合言葉に、定額制の自習型プログラミングスクールのFC事業を展開するテックジム株式会社を創立。
web3はエリートのものではない
NFTという新たな価値観、web3の分散化の概念は、今まで中央銀行を大本とした既存の金融システムが変わるということを示唆しています。それなのに「なぜ今になって、既存の金融機関と共にビジネスの繁栄を築き上げてきたエリートたちがweb3を推進するのか?」という疑問が浮かび上がります。

というのも、今後メタバースが本格的に浸透すると、インターネットの世界の可処分所得を取ってしまうので、リアル経済の既存ビジネス、また既存ビジネスと結託してやってた人のビジネスは成り立たなくなるわけです。中央集権だからエリートでいられる世界が終わるのです。それなのに、彼らはweb3推進を掲げているのです。

僕は、エリートというのは、平安貴族だと思っています。荘園を全国に沢山つくり、自身は京都でぬくぬくとしている間に、治安維持は地方の下級武士に任せた。そこから武士が地方で力を蓄え、鎌倉幕府という武家政権が誕生したのです。

web3における社会変革の構図は、この平安時代から鎌倉時代のようなものだと思っています。web3は、エリートたちのものではないんですよね。Web3的な考え方やツールなど、これから生まれてくるものは、現代の武士であるエンジニアの武器なんです。
平安貴族はお金を重要視しますが、武士はロマンだったりします。例えばですが、インターネットの世界では、「無料化して全員に開放する」というところにワクワクします。無料化すると、今度はそれを生業にして安住していた方々にとっては、もう価格破壊のわけです。

100万円かかっていたものを、数万でできるようにする。これがネットの醍醐味です。
結局、お金を重視し、儲けようって考える人は結局儲けられないというか。
武士は、握り飯2つで十分に夢を追うことができます。
ただの金主が、夢と握り飯で生きている人たちに勝てる訳がないんです。
「お金を払うから働け」は通用しない
会社組織のお金の払い方も随分変わってきていますね。日本では、これまで年功序列で就職した会社で定年まで働くのが主流でした。それが、3年に一度は転職して当たり前な時代になりました。また、ここ数年で副業がものすごく増えましたよね。

スタートアップでも、会社の社長まで副業している時代においては、VCが会社の役員たちに、全員フルコミットを求められないというか。社長だけが連帯保証人に入っているので、それ以外の役員たちはもうダメだと思ったらすぐに出ていく、社員だってずっと雇い続けてくれなんていうことはありません。もう組織として成り立っているのか危うい形態ですよね。

でも、インターネットの世界になると、ティール組織みたいなのが当たり前になっているので、重要な仕事も外部に任せている会社が一般的になっています。財務担当は他の会社の財務も見ていたりします。

そこでまた鎌倉時代の話になりますが、鎌倉殿と御家人みたいな封建関係っていうのがもう難しくなってるんで、「これだけ金やってんだから働け」ってことができないのです。
その仕事が本人にとって面白いかどうかという観点でしか人を集められない時代になると思います。

マーク・ザッカーバーグも過去に言っていた、夢を持つのが大変な世代が次の働き手です。世界が相対化して何が楽しいかわからない世代。その世代にとっては、既存の会社組織そのものがもはやイリュージョンというか。なので、もう少し違う発想でいかなきゃいけない。
個人が情報を収集し発信できる会社が人を集められる
これまで会社は中央集権型で、自社の情報やノウハウを社内に留めるためコントロールしてきました。人が流動するようになると、今度は横の会社が見れるわけです。A社の強みはこれ、ここにB社からこの要素を足すと良い、といった横の連携もできるとなると、個人が収集できる情報って膨大にあるわけです。
これが、メタバースじゃないですけど、既にコミュニティをネット上で持ってるので、我々はオンラインサロン一つ入るだけで、横の会社の内部情報がわかるということが普通にあるわけです。もうコンプライアンスみたいなものは、実はほぼ機能していなくて、ひとかけらの良心で成り立ってるような世界です。

盲目の信頼でしか成り立ってないっていう中でどうやるのかが僕が思うプラットフォーム思考です。上位レイヤーは情報コントロールができないっていう世界ですと、もうネット社会では、双方向で井戸端会議が繰り広げられているので、あることないこと全ての情報が飛び交うような混沌とした世界。この混沌とした世界では、上位レイヤーがフルコミットを強要できなくなります。そうすると、上位にいることが理想的ではなくなるということです。この「理想的でなくなる」という点がポイントです。
「これまでの理想像」が根本的に変わる
これまでは、上司と部下の主従関係によって様々なコンフリクトがありました。今は、「そういうやりとりとストレスが無駄」という世界になってきているのかなと感じます。そこで、僕が思っているのが、「プラットフォーム思考」なんです。まだ課題もありますが、要は、基本的なルールだけを決めて、あまり感情的な諍いをなくそう、という動きです。
クラウドソーシングを例にあげると、別に質の悪い仕事でもバルクでやってもらい低コストでやる。複雑な仕事はなかなか難しいけども、バルクでやる仕事だったら誰がやってもさほど変わらないし、万一ダメだったら跳ねよう、という考え方。この考え方って意外と今までなかったんですよね。

これまでだと、利益にさほど影響のない仕事やってるような人たちにも、チクチクとマイクロマネジメントをして、全体の利益に関係ないところで感情的になっていた会社が結構あったと思います。どんどん外注してクオリティもある程度で良しとする、全てにおいて完璧なものでなくても良いという世界。
YouTubeで頑張ってる人って、YouTubeに文句言う人はいるけど、「どこどこの社長がXXでさぁ」などと本格的にお酒の場で愚痴るようなレベルまで誹謗中傷することにはならないですよね。それは、もうルールで決まってるからです。一方で取りつかれたようにYouTubeで一生懸命働いている人もいますよね。お金も儲からなくても頑張っている人。ここにもやはりルールがあるのです。先に述べた、プラットフォームの課題。それは、一部の人間を大勝ちさせ、ほとんどの人間をゼロサムゲームの餌食にすることです。
会社には、平等分配、公平分配という概念があるので、誰もがある一定の対価を得られるわけです。Googleにはなりきれないとは思うんですけど、一つGoogle的になり得るとしたら、僕はフランチャイズだと思っています。
新時代のweb3型フランチャイズ
今までのフランチャイズビジネスは結構、FC本部の締め付けが多かったと思います。近年、大手コンビニがFC加盟店と揉めていました。フランチャイズは本来「共存共栄」という理想を抱えてるのに、実際はFC本部が独裁者になっていて、中央集権的なんです。

中央集権型の企業は、本来フランチャイズには向いていません。中央集権型のフランチャイズは、地方の経営者は下層、本部はエリート層と考えている節があります。

しかしながら、地方の人にも有能な経営者はいます。好きにやってもらうチャンスを与えればいいと思うのです。その際、本部の全収益は右肩上がりにはなりません。さぼる人もいるでしょうから。でも、そこを許容するんです。これがWeb3だと思います。

合理的なエリートたちは全ての土地で収益を伸ばし続けるのが当然だという考え方をしますが、「今年はなんか疲れちゃったから休みたい」という自由さを許す考え方です。僕もテックジムをフランチャイズで運営していますが、加盟店には目一杯働いてほしいけれど、「働け」とは言えないですよね。

「全体の収益が上がるから頑張りましょう」と言いますが、全体の収益は、他の人には関係ないのです。会社の社員にも同じことが言えます。社員の給料が上がれば、それで良いのです。むしろ給料もあがらなくていい人もいる。そこを理解していないエリートは多いと思います。
小規模グループでGAFAMがやらないところに商機
チームは少ない人数でも大きな仕事はできます。Instagramは2名で開発されました。1000億円で売却した当時も13人でした。この例をみても、本当に少人数でできるんですよね。

これまでは、ビジネスは、GAFAMに対してどうするかという文脈で語られていたと思います。
そもそもGAFAMは、人々が無料で人脈、情報、コミュニケーション、教育が手に入る世界を提供してきました。だけど、彼らには通行税を払わなきゃいけないっていうんで、それがWEB3になって崩壊すると言われていますが、僕はそれはないと思っています。

僕自身がそうですが、Googleを例にとっても自分の個人情報はほぼ全て晒しています。そういう意味では、Googleは僕に色々なものを買わせることができますが、そこには限度がありますよね。既にシェア95%あるものが99%になったって、全体の売上はさほど変わらないという話です。なので、対GAFAMの話になりますが、対抗するというより、GAFAMがGoogleの手の届かないニッチなところ、Googleを脅かさないけれどビジネスになる場所ってあると思うんですね。

web3社会においては、トークンで資金を集めて数人で作った会社が、何十億稼いで終わりっていうのが沢山出てくるようなイメージです。これをまた鎌倉時代に置き換えると、天下を取りたい人もいれば、地方の一角で良いという人もいます。
僕の周りの起業家も、1人でシステム作って、何百社に導入されて、年収1億ですみたいなのがちょいちょいいるんです。それ以上も大きくしたくないんだそうです。
大企業も彼らにとっては小さな市場なので乗り込んでこない。

1人で1億稼げる時代なんです。これがすごい面白いところで、そこがWeb3の主戦場になるのかなと思っています。そうなると、既存システムにおいてのエリートは食べていけないので、僕らからしてみれば「こちら側に来ませんか?」という話です。
web3時代の教育
僕がちょうど早稲田大学を出たとき、就職氷河期だったのですが、インターネットが出てきて学歴社会は絶対終わるよなって思ったんです。

これだけ先行きが見えない中で、エリートは通用しない。実際、僕らの周りも別にうまくいってる人は、学歴じゃないですしね。
でも親の幻想っていうのがありますからね。教育って30年かけて幻想を作り上げるものなので、20年たった今でも、うちにきている学生も、学歴が大事というんですよね。

卒業したところでやっと「あれ、おかしいな」って思うわけですけど、その頃には、同じような被害者はいっぱいいるし「俺も何大学卒」って言い合えるからそれでいいのかもしれません。
確率論では、エリート層がエリートに優位な社会を作ったわけなので、大手金融機関や大企業といったところは、エリート指標でしか人の選別ができなくなっているのでしょう。
これからの時代を幸せに生きるための「ハック思考」
これからの時代をいきるのに、人生を楽しくするのは、「ハックする」という考えだと思うんです。エリートの人たちは、エリート街道という道があって、そこをなぞる人生を歩んできました。年収数千万、肩書はこれくらい、家族構成は、というような攻略本を読んでチェックリストをこなしていくような人生。ちょっと気にいらなければ、どこかでリセットしてといった形。これからは、何回リセットしても、もううまくいかない世界になります。

そのときにやっぱりアナーキーな生き方が重要だと思います。当然、一獲千金を狙うけど、生きてるだけで十分、面白い技術があるからいいか、といったように「これでいいや」というポイントがすごい多いんですよね。

このように「ハック思考」で生きている人のほうが幸せ度が高い気がします。ITの技術を持ってると、どこに住んでもいい、出世よりも自分の生き方、徒党を組めばなんでもできる、という世界観があるんで、何やっても食えるぞっていうオールマイティ感あると思うんですよね。

今のエリート層っていうのは、中央集権でポジションを渡されてるから、ぬくぬくと生きていますが、本当はWeb3型ってエリート層は、もうビクビクしなきゃいけないんですよ。
インターネットビジネスで大金を得た人たちが、web3でも鼻息が荒いようですが、彼らもまたエリートなので、脅かされる立場です。
人の扱い方がどんどんセンシティブに
ここ20年程で、人の扱いがよりセンシティブになっていると感じます。「やってください。お願いします」とお願いする時代。発注側、受注側という関係ではなく、役割分担で横で喋り合うという関係性。社長自ら現場に入らないと全体像を把握できない時代です。先ほども言ったように、会社にコミットしてるのは社長のみという時代ですから。

そういう中でどうマネジメントするかっていうと、やっぱりプラットフォーム思考。
フランチャイズみたいなプラットフォーム思考でルールを決めて、「もう働きたい分だけ働いてください。ちょっと働きにくくなったら言ってください。」という考え方で働いてもらう。

方向性が違うと感じたら辞めてもらって結構だし、副業も全然OKですよっていう中で、うちの会社で働くのが合理的ならばぜひ続けてください。というスタンスです。

これは全てに応用できると思ってます。「資本」ではなく「働く人」に寄り添った考え方をするとこうなります。これが、僕のWeb3的生き方の提唱です。

あとがき

藤永さんのweb3のパワーバランスの例えが、平安時代の貴族と武士という点がとても腑に落ちました。これまでの武器は、鉄砲だったりしたわけですがこれからはITスキル。次世代の育成、教育を考える際にもぜひ考えたいポイントだなと思いました。またテックジムであったり、IT業界で長年お仕事されている方からの「人との関わり方」にフォーカスしている点とても印象的でした。私たちが使う技術の先には人がいる。その基礎を忘れずに考えたいですね。

インタビュアープロフィール

満木 夏子

Pivot Tokyo
イタリア系ファッションブランドの日本法人を経て渡英。帰国後は、グローバルカンファレンスadtech の運営責任者を務める。
2020年Pivot Tokyo設立。D2C Summit、NFT Tokyo を立ち上げ。日本からグローバルに挑戦する人を増やすため、GKCorsという英語の幼児教室を運営している。

Newsletter

Newsletterに登録して最新情報をゲット!

CONTACT

Pivot Tokyoに関するお問い合わせ

お問い合わせフォーム