INTERVIEW

[NFT Tokyo Conf. スピーカーインタビュー]なぜ今NFTなのか~日本企業と相性のよいNFT参入方法とは~

2021年初頭から、NFT関連のニュースやセミナーが世界的にメディアを賑わせています。日本国内でも年末にかけて熱量があがっている話題。現時点では、まだ個人参入が主流ですが、海外では企業が本格参入するという事例が増えています。バーバリー、ルイヴィトンなどのラグジュアリーブランドから、NIKEやadidasなどのコンシューマーブランドまで様々。日本企業がNFTに参入して成功するには?という観点から、NFT Conf. Tokyo 立ち上げを担う満木が、世界でもトップ3を争う仮想通貨取引所crypto.comのExecutive Vice President, Global Head of NFTsのジョー・コニャーズ氏にお話を伺いました。

スピーカープロフィール

ジョー・コニャーズ

Executive Vice President, Global Head of NFTs | crypto.com
日本企業に最適なNFT参入方法と成長の可能性について
日本企業のNFT参入の有益性についてどのようにお考えですか?
ジョー氏:
日本は、既存のIPは非常に成功している国です。NFTに参入するにおいては、適切な市場参入方法を見つけなければならないと思います。日本にあっているのは、大企業とのジョイント・ベンチャーではないでしょうか。他の業界においても、CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)で、大企業とスタートアップのコラボレーションが一般的な印象を受けています。NFT分野における、大企業のスタートアップ買収もあり得るでしょうし、IPホルダーや経営陣など、日本市場の複雑さや特殊性を解決できるような外資系組織とのジョイント・ベンチャーもあり得るでしょう。

NFT文化が受け入れられるか、という点を不安に思う人もいるかもしれません。日本では、”収集”の文化が昔からあるように思います。その点、NFTが普及するのではないか、と思っています。何がきっかけで普及するかは難しいところですが、日本はどこかで火が付いたら一気に実用性が高まるのではないでしょうか。
大企業がNFTへ参入する際の切り口とその利点とは
企業やクリエイターがNFTに参入する具体的な方法、メリットはなんでしょうか。
ジョー氏
今現在できる取り組みとしては、やはり”アートプロジェクト”として行うことだと思います。映画やアニメ、ゲームを作っているスタジオには、必ず撮影秘話があるものです。NFTを使って、その話をファンと共有するのです。キャラクターの話でもいいかもしれません。特定のIPをNFTで拡張することは、レバレッジを効かせるのにとても良い方法です。

ポケモンや魔法のカードのようなトレーディングカードと同じように、さらに踏み込んでエコシステムを構築することもできます。そのアイテムやキャラクター、あるいはデジタル上の建物や土地をもとに、デジタルコレクティブを売買できるエコシステムを作ることができます。自社のIPに本当にふさわしいものを見つけ、人々が本当にワクワクするようなものは何かを考えなければならないと思います。
もし、デジタルのものだけでは説得力がないと思うのであれば、NF T購入者にリアルのものを合わせて提供し、物理的な価値を与えるということもできます。
「お金では買えない体験」を提供することは、NFTコミュニティから非常に高い評価を得ています。これは、信頼に基づくものです。ですから、本当にこの分野を信じている人達、顧客を集めることが重要です。
なぜ今NFTに注目が集まっているのか
NFTが世界的ブームです。なぜ今NFTが注目されているのでしょうか。
ジョー氏:
ひとつには、デジタル・コレクティブが半永久的に存在することが約束されている点だと思います。私は、この20年間ビデオゲームに親しんできました。その過程で様々なアイテムを買い漁ってきました。しかし、運営会社がなくなれば、そのアイテムに価値はなくなります。ブロックチェーン技術を使えば、収集品を長く保管することができるのです。

もうひとつは、DeFiと言われる分散型パスポートという考え方です。これは、インターネットの約束事としてずっとありました。ブロックチェーンは、中央集権的な組織に基づく信頼から、個人的な”キー(鍵)”を所有することを可能にしたのです。かつて人々は、銀行を信頼するように、大企業を信頼していました。時が経つにつれて、大企業は大きすぎるし、様々ななことをやっているので、必ずしも大企業を信用できないことが分かってきました。従って、人々は自分自身の運命は自分でコントロールしたいという要求を持つようになりました。大企業を全く信用しないわけではありません。ただ、大企業はさまざまな局面を経験し、ハッキングされることもあるのです。この分散型ユーティリティ・パスポートを持つことができるというのは、非常に有望で、これが世界と永遠に付き合う方法になるのだということが、ようやく人々に理解されつつあるのだと私は思います。
NFTの未来:この先5年の動きとは
NFTには様々な可能性があるといわれています。現在は、皆がトライ&エラーを繰り返すフェーズかと思います。その点、この先5年位でどのような動きがあると思いますか?
ジョー氏
NFTコミュニティ内で、次世代のハローキティ、ガンダム、大型のデジタルガジェットなど、新しいブランドが今誕生しています。マーベル、ディズニー、スター・ウォーズなどの巨大スタジオの作品が、今後NFT参入しこれまでにない量のコンテンツが生み出されるでしょう。所有権と価値の共有です。コレクターが友達に話してくれることで、そのバリューチェーンが評価され、そこで始めてその熱量が金銭的なものへ姿を変えていくのだと思います。
NFTは、まだ準備の段階だと思います。信じられないほど素晴らしい作品もありますが、全宇宙、全世界、全ストーリーを創造するには、まだ十分な時間がないのです。本当に素晴らしい物語、本、映画を創り出すには、何年もかかるのものです。創造性には多くの時間と勢いが必要です。ビジネス再度は急速に進みますが、クリエイションが揃ってくるのはもう少し先でしょうね。この間、市場にも浮き沈みがあると思います。
企業の役割とクリエイターエコノミーの創出について
NFTは今アートの視点から語られることが多いですが、クリエイターコミュニティ活性化のためには何が必要だとお考えですか。
ジョー氏
私たちは10年以上に渡り、クリエイターの成功をサポートするための企業づくりに挑戦してきました。大手のクラウドファンドプラットフォームは、大きなプロジェクトを取り扱った時に機能する一つの形式でした。「バズを意識したプロジェクトであること」がポイントです。そのためには、クラウドファンディングの前段階で、ある程度の資金が必要です。

課金システムを備えたストリーミングサイトも同様です。ストリーマーが意欲的で、毎日配信できる余裕があれば、うまくいくのです。現実には、ほとんどのクリエイターが、日々コンスタントに良質なアートを創出することは不可能に近いです。素晴らしいアートは、完成までに膨大な時間がかかります。NFTは、真のクリエイターのために、作品を作るための資金を提供する橋渡しをするのだと思います。

クリエイティブ・ライティングの現状は、非常に短時間の消費活動で終わってしまうので、NFTは非常に有益だと思っています。NFTのコミュニティを通じて、観客やパトロンから十分な資金を得ることができ、時間を持つことができるというのは、意味のある創作をサポートできます。
歴史的にみても長い間、このようなことはありませんでした。近代においては、クリエイティブの商業化され、利益はそのファンではなく、企業へ流れていました。もちろん、素晴らしい創作物を世に送り出した企業もありますが、多くは層ではありません。NFTはそういったこれまでの不利益を解消するものだと思っています。
音楽業界からNFT界へ
前職は、デルタミュージックのチーフ・ストラテジー・オフィサーでしたよね。そこから現職へはどのようなきっかけで移ったのですか?
実は、私は個人的に2011年から暗号通貨を扱っていました。当時はビットコインのマイニングをしていたのです。実際にやってみると、部屋がとても熱くなり、電気代とマイニングで得る利益率が合わず辞めてしまったのですが、それ以来ずっと後悔しています。
2016年頃、有名なソングライターであるイモージェン・ヒープというクライアントがイーサリアムの実験を始めたことを聞きました。それがきっかけで、コンセンシスの創設者であるジョー・ルービン氏に出会いました。その時点では、イーサリアムはまだ今ほどの基盤は持ち合わせていませんでしたが、その後一気に成長。ブロックチェーンを使って、面白い取引方法を作る実験をしていたのです。まさかここまで流行るとは思いませんでしたね。古いメディアが持っていたものに、新しい希少性を持ち込むという発想は、本当に面白いです。私は音楽NFTのエキスパートではありませんが、ミュージシャンがファンと交流するための興味深いフォーマットだと思っており、そういうコミュニティを作るためには何かできるのではと思ったこと、やはりこの分野は将来的に有益だと思ったこともあり転職しました。

Crypto.comについて

Ctypto.comは、世界最大の暗号取引所の1つ。3000人以上を対象に世界中で運営されています。ユーザー数は1,000万人以上、1日の取引量は、世界の暗号通貨取引で2位か3位を占めています。
最近では、2021年3月にNFT部門を立ち上がりました。ジョー氏は、その立ち上げを担っており、ゼロから数億のランレートとトランザクションにビジネスを成長させてきました。

同社は、これまでに220回以上のNFTドロップを実施。デイリードロップ方式で、毎日何か新しいものを出しています。クレジットカード、デビットカード、crypto.comのウォレット、またはメタマスクやレインボーなど、サードパーティのウォレットを持ち込んで、これらのエンティティを購入することが可能です。

NFT Conf. Tokyo
開催日程 2022年3月17-18日
場所 東京都内
参加者数 100名限定
対象 NFTベンダー、クリエイター、アーティスト、リセラー、ブランド事業主
プログラム: VIPレセプション、カンファレンス、NFTギャラリー
詳細はこちらウェブサイト

あとがき

日本でのNFTは、CVCとM&Aでの参入が最適なのではという視点がとても興味深いと思いました。先日参加した米国のエグゼクティブが集まる会員制の集まりでもNFTやcryptoの話が注目されていましたが、「ブロックチェーンはどこか1社が所有しているものでないことから、企業がインハウスのリソースだけでビジネスレベルまで準備するのは長期間かかる」といわれていました。となると、知見がありスピード感のあるスタートアップと資金力のある大企業がコラボレーションするという構図は非常に現実的だと思います。Web3Tokyo 第1弾NFT、3月からコミュニティ始動です。詳細はこちら

インタビュアープロフィール

満木夏子

Pivot Tokyo / Vueloo
Pivot Tokyo 主催。D2C Summit、NFT Tokyo 立ち上げ。日本からグローバルに挑戦する人を増やすため、GKCorsという英語の幼児教室の運営も。

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