INTERVIEW

遊ぶだけのゲームから、経済活動をする場へ MCHが挑む、NFTゲームの新しい経済圏とは

2021年初頭から、NFTというワードが連日メディアを賑わせている。ブロックチェーン技術を使うということから、ビットコインを連想する人も多いのではないでしょうか。NFTはそれだけではありません。海外では多くのプレイヤーが日に日に起業しているまさに戦国時代。日本国内でもいくつか参入している企業があるものの、世界に比べるとそう多くはない。今回は新時代のゲームとしてNFT機能を実装したゲームを開発・運営するMCH社の代表取締役である若尾氏にお話を伺いました。

スピーカープロフィール

若尾俊仁

MCH株式会社 代表取締役
<経歴>
2020. 1月 double jump.tokyo株式会社入社。マイクリプトヒーローズ プランナー。
2020.10月 マイクリプトヒーローズ プロデューサー就任。
2021. 2月 double jump.tokyo株式会社を退社し、マイクリプトヒーローズ事業を引き継いだMCH株式会社の代表に就任。
まずは貴社のサービスについて教えてください。
若尾氏:マイクリプトヒーローズは、NFTを使ったゲームです。ゲーム自体は、モバイルゲームの時代にも存在した、RPG(ロールプレイングゲーム)の様なボタンを押して進むというシンプルなものです。高度なアニメーションや3Dなどもなく、ファミコンゲームを彷彿させるドット絵で構成された画面です。音楽もチップチューンと呼ばれる、これもまたファミコンゲームで使用されていたものです。懐かしいレトロゲームをデジタルゲーム時代にという発想から作られたゲームであり、それが売りでもあります。
「新しい時代のゲームとしてNFT導入」そこに至るまでの経緯、きっかけはどんなものだったのでしょうか。
若尾氏:「マイクリプトヒーローズ」は、もともとは、double jump.tokyo(ダブルジャンプトーキョー)という別会社の1作目のプロダクトとしてリリースされたものです。その後、MCH社への事業移管されています。
当時の開発メンバーは、ソーシャルゲーム制作に携わっていた者が多く、中にはブロックチェーンに精通しているメンバーもいました。昨今のソーシャルゲームは、ビデオゲームにインターネットやSNS(コミュニティ)の要素を組み込んだものです。そこからさらに拡張した世界を実現するという発想から、ブロックチェーンがもたらすエコノミー(経済圏)が存在する「ブロックチェーンゲーム」が次の主流となるのではないか、という観点から開発されたと聞いています。この考え方は、仮想空間、メタバースなどに通じる部分があり、そこがこのゲームの面白さだと思っています。

理想の世界観としてわかりやすいのは、映画「レディ・プレイヤー1」です。世界中のIPのオールスターでゲームが遊べる世界。その空間では、様々な人が新しいゲームや経済圏を作り出して、宇宙のようにどんどん拡張されていく、そんな世界観を持ったゲームがあったら良いなと。当時、僕自身もプレイヤーとして参加していましたが、そういう思いに共感したこともあります。

この世界を実現させるには、ゲーム内のアイテムを外に出すことができ、そのアイテムが他のゲームでも使える、といったことが重要な一つの要素だと感じました。
日本では、Sword Art Online (ソードアート・オンライン)がわかりやすい例だと思います。このゲームには、「キャラクター・コンバート機能」があり、ゲームAのキャラクターの機能を保持したまま、ゲームBでプレーできるという画期的なシステムです。

我々も一部のNFTについてこれに近いものとして、マイクリプトヒーローズとクリプトスペルズやブレイブ フロンティア ヒーローズというゲーム間でのコンバートを実現しています。NFTに関しては、情報はいくらでも付与することができるので、ゲームに限らず色々なところで使えることも目指しています。
NFTは世界的にも様々な可能性について議論されています。おっしゃっていた、バーチャルで新しい経済圏、そこでの経済活動について注目が集まっているようです。企業や個人が注目・参入すべき理由をどのようにお考えですか。
若尾氏:「ゲームの視点からになりますが、NFTの注目ポイントのひとつは、まずNFTの基盤となっているブロックチェーン技術における特徴ではないでしょうか。これまでのデジタルコンテンツは、コピーがいくらでも可能で、過去にも漫画や映画の海賊版サイトが問題になりました。その反面、NFTはブロックチェーン上にあることで、仮に偽物が出たとしても、発行元との見分けが明確であるという点はユーザーにもわかりやすいメリットだと思います。ロイヤリティを権利者に直接還元しやすいというプロダクト側の利点もあります。

2つ目のわかりやすいメリットとして、「永久不滅」ということだと思います。サービスが終了しても恒久的にNFTだけはデータが残る。これまでは、サービス終了になったゲームは、当然ながらプレイできなくなりデータも消えました。ゲームプレイヤーにとって、それまで毎日やってきたゲームが突然サービス終了し、愛着のあるキャラクター、苦労して手に入れたアイテムが消滅することほど悲しいことはありません。

NFTは、アート以外にも、仲間との思い出を残すために画像を作ってみる、といったことも可能です。自ら発行して自身で保管することのできることも利点のひとつではないかと思います。作ったNFTで遊んだり、世界を構築していくようなゲームも開発されています。

3つ目は、スマートコントラクトだと思います。匿名でありながら個人間の安全性が高い取引ができるマーケットの存在もブロックチェーンならではです。既存の個人間の売買を行うCtoCサービスは、個人情報の登録が必須です。プラットフォームを提供する企業が、金銭受注や住所の管理などを仲介役として行っているため問題なく運営されていますが、もしこれらを全て個人間で取引したら、商品の郵送やお金の送金でトラブルが発生する可能性もあるでしょう。それがコミュニケーション難度などにより取引に間違いの起きうる海外の相手となればなおさらです。その点、ブロックチェーンは、システム側で安全が担保されていて、顔や国籍も知らない人とも一定の信頼性を保って取引できるということが、経済活動を加速している要因のひとつかと思います。
海外では、企業のNFT参入に関するニュースが増えています。この辺りは、2022年以降さらに加速するのではと思われます。ポイントはマネタイズだと思いますが、その観点からNFTはどこがスケールポイントだと思われますか。
NFT単体でというよりは、いわゆるDeFiで通貨自体の交換が活発になっていくことだと思います。あとは、利用者の母数が増えることではないでしょうか。キャズム越えがいつになるかもポイントだと思います。

利用者数を増やすという観点からは、一般の人がどれだけ簡単に現存のデバイスで取引ができるようになるかも非常に重要なポイントだと思います。スマートフォンの普及がiPhoneで一気に加速した時のようなきっかけがあると一気に加速すると思います。

メタバースでの生活を基盤とする、というのは現在ではSF映画の世界でしかありませんが、そういう生活をする人がある程度の数増えてくるとこれもまた一般大衆に受け入れられるタイミングではないかと思います。SNSで大半の時間を過ごしているという人は既にいると思うので、この人たちが徐々にバーチャル空間に移行してくるとSF映画の世界が現実味を帯びてくるのではと思います。

最終的にそういった社会基盤がバーチャル空間にできると、リアルなものより価値を持った商品がでてくることも考えられます。そうするとそこでまさに新しい経済圏が生まれ、人と人とのやりとりがこれまでとまた異なったものになるのではと思います。
様々な可能性が語られる一方で、懐疑的な見方をする方もいらっしゃいます。若尾さんのご経験からNFTを試す際に気を付けたほうがいいことはありますか?
若尾:まず市場に出される前に、殆どの場合はホワイトペーパーが公開されます。その後、NFTが売り出されますが、ホワイトペーパーの内容を全て鵜呑みにするのは危険です。公開されていない場合はより懐疑的になった方がいいでしょう。というのも、プロダクトが何らかの理由でローンチされない場合には、保有しているNFTは価値を持たないゴミとなるからです。本当に実現されるのか、価値を創造できるのか、を有識者の見解、自らの判断で見極めることが重要です。
今は、DeFiも乱立フェーズなので、新しいところにやみくもに手を出すのはオススメしません。早期に脆弱性が見つかり、資産を失うこともあります。システム不備ではなく、単に悪意をもってやる人もいます。これまでは、サービスの運営責任は会社法人にあり、それが人々の信頼を得ていました。人々が懐疑的にとらえる原因の一つとして、良くも悪くもブロックチェーンの匿名性が高い点が挙げられます。
とはいえ、これまでにない可能性を秘めた技術であるので、気になったら少リソースで始めてみるのが良いかと思います。
マイクリプトヒーローズも1月初旬に大型の新コンテンツ「RAYS Mining」をリリースし、今までより少リソースで始めやすくなりました。ぜひ、NFTやトークンを使うことをゲームを通じて体験していただけると幸いです。

あとがき

NFT界隈、日本でもじわじわきていますね。中でもゲームは、NFTやブロックチェーンの概念をいち早く取り入れて運用してきたという観点からやはりこのトピックを語るうえで外せない要素の一つでしょう。まさに映画のような世界が実現する日もそう遠くないと思わせられる話題です。日本にはそんなにプレイヤーがいないといわれる中、海外からもお声がかかるというMCHさん。もっとお話したいことがたくさんありました。

インタビュアープロフィール

満木夏子

Pivot Tokyo
Pivot Tokyo 主催。D2C Summit、NFT Tokyo 立ち上げ。日本からグローバルに挑戦する人を増やすため、GKCorsという英語の幼児教室の運営も。

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