INTERVIEW

米国トレンドレポート:レストランのいまと、顧客ロイヤリティの現実

日本では緊急事態宣言の延長も検討される最中、かねてより議論にあがるレストランの営業制限。「食」を提供する場としてではなく、人のつながりを生んだり、コミュニケーションスペースとしても重要なレストランの営業について、米国の現状がどのようなものか、Vueloo,inc COO 岩瀬 昌美よりレポートしてもらった。

スピーカープロフィール

岩瀬 昌美

Vueloo,inc COO
名古屋出身。米国在住29年目。南山大学卒業。米国カリフォルニア州立大学サンディエゴ校にてMAを取得後、三洋電機本社の女性初の総合職として入社し、海外広報を担当。
その後再渡米し、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校にてMBAを取得。
マルチカルチュラル広告代理店最大手の Kang & Lee AdvertisingでシニアアカウントエグゼクティブとしてBank of America、AT&Tなどの米系企業のアジア系マーケティングを担当。その後、ニュージャージのAT&T本社にて、マルチカルチュラルマーケティングコミュニケーションマネージャーとして中国、韓国、ベトナム、フィリピン、日本などのアジア系マーケティングを担当。Kozmo.comでは、ナショナルフードアンドビバレッジディレクターとしてオンラインでの日米の食料品販売(ハーゲンダッツ、コカ・コーラ等)を経験。
2002年にロサンゼルスで「MIW Marketing & Consulting Group,Inc.」 を設立。米系企業のマーケティング戦略、および日系米国進出企業のマーケティング戦略を数多く手がける。主な取引先は、ミツワ マーケットプレイス、ヤクルト、カルピス、HIDA、全農など
現在は、二児の母親として母親業を努めながらも、米国において「食育(Shoku-iku)」プロジェクトを推進するため、米国最大の日系スーパーマーケット、ミツワ マーケットプレイスにて子ども向けの食育教室を開催。
また全米放送の中華系TV Phoenixなどで日本食の料理番組を担当するなど、食に関わるプロジェクトを多く手掛けている。
日米において、日系企業や、大学生向けにも各種講演活動も実施。2016年、中小機構 海外ビジネス戦略 推進支援事業 現地アドバイザー就任。
ワークライフ・インテグレーションコンサルタントとして、ワークライフ・バランスに代わる働き方を推進中。
酒類のみを提供するバーもオープンするように
 
日本では、酒類の提供をNGとする規則が今回の緊急事態宣言中には発令されたが、米国ではバーの営業も再開し始めているとのこと。もちろん、一般層へのワクチンの浸透などが重要なキーファクターだが、日本では禁止の方向に動いている内容について、米国では反対にオープンし始めるという復活の動きが見られている。
州ごとに細かく分かれた営業指導に関しては、毎度明文化されて共有
 
米国では各州ごと、レストランの営業に関する規則は個別に細分化されているが、きちんと明文化して通達される。世の情勢や、感染者数の変動によって毎度細かく規制状況が変わるものの、それがきちんと明文化して通達されるあたりがアメリカらしい。例えば、テーブルとテーブルの間には6フィートの間隔を設けることが必要、などフィジカルディスタンスの観点から、二次感染の予防、たい顧客および従業員に対する健康管理、クリーニングマニュアルなど広い観点から細かなルールが設定されていた。もちろん、それらにきちんと目を通す労力はあれど、何を守れば良いのかをはっきり宣言してもらうことで迷うことはなくなりそうだ。
テイクアウトのみ、席数キャパシティを下げての営業では値上げも
 
今でこそ、店内での営業が復活したりバーの営業も戻ってきている状況だが、テイクアウトのみ、屋外での営業のみと店舗全体のキャパシティに影響する営業ルールが長く言われていたアメリカ。もちろん通常時よりも客単価の落ち込みがあることは間違いないが、その対応として商品の値上げや、チップとは別にサービスフィーを追加するレストランも多かったようだ。もともとのチップ文化などを鑑みても、全体の値段としては1.4〜1.5倍ほどの値上げが見られていた。
値上げ、追加のサービスフィーがあっても常連顧客によって支えられる営業状況
 
値上げや追加のサービスフィーがあると、次に懸念される点は客足が遠のくのでは、ということだ。この点に関しては常連顧客をはじめとした利用者の理解が大きくあった、という。チップの文化のような商習慣や、カルチャーといったことも影響しているのかもしれないが、「誰かが困っている、困難な状況にいるときは助け合う、理解する」という文化が根付いているアメリカ。こういうときだからこそ「いつもの店」「馴染みの店主」を支えたい、そんな気持ちが値上げにも理解を生んでいたという。

あとがき

日本でも、レストランにとって厳しい環境が続いた1年。顧客やレストランを開いている地元客とこれまでどれだけ関係性を築いてきていたか、というのが営業に大きく反映されていたように思う。レストランを利用する側の我々としても、外食の頻度が減るからこそ、いざ外食をするときにはそのお店を吟味したいというのが本音だろう。
その気持ちの真ん中にあるのは、「安心して食事がしたい」「こういうときだからこそ、馴染みのお店の力になりたい」そんな気持ちだったのではないだろうか。

レストランに限らず、自分たちのブランドや店名をどれだけ真っ先に想起してもらえるか、というのはブランドロイヤリティにおける要だ。特にレストランというのは食という環境である以上の存在と考えている人も少なくない。ただ美味しいものを提供するだけでなく、自分の店に愛着を持ってくれている顧客をどれだけ生み出せるか、レストラン側のコミュニケーション深度も問われる時代になっている。イートインだけでない利益をどこで生み出すか、という“ポートフォリオ”を再考することが重要であることに加えて、どれだけ顧客ロイヤリティを“心の繋がり”の側面で生み出せるのか、こうした米国の現状から学ぶこともあるかもしれない。

インタビュアープロフィール

わたえり/渡部 瑛理果(Erika Watanabe)

Pivot Tokyo株式会社
1992年生まれ、千葉県出身。通称 わたえり。上智大学経済学部を卒業後、2015年に博報堂入社。営業職として外資クライアントを中心に担当したのち、TBWA\HAKUHODOへ出向。コミュニケーション領域のプロジェクトマネジメントに従事。2020年7月より、Pivot Tokyo株式会社に所属。現在は、Ascendant Japan事務局長としてコンテンツクリエイション、運営に携わる。

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